温故知新

October 16 2009

こんにちは、田尻です。今回は、最近仕上げたビスポークサンプルのご紹介です。

 出来上がったサンプルはローファーです。スウェードとカーフのコンビネーション使いは、これからの季節に合う素材と色味だと思います。

最近ではあまりみかけないデザインですが、クラシックで普遍的なデザインです。ローファーというとヴァンプにモカシン縫いを施し、甲部を帯状の革で覆ったスリップオンスタイルのものを言いますが、この靴ではウィングチップを施し、穴飾りをバランスよく配することで、ビスポークらしい顔つきになりました。

 実は、このデザインソースは、リーガルの古い資料を参考にしたものです。昔のパンフレットや資料室の靴を見ると、デザインは今見てもとても新鮮なものが沢山あります。今、売り場にあってもおかしくないものも多く、お客様のご要望を伺う時などにたいへん参考になります。流行は巡るといわれていますが、現代性を付け加えることで、新しいデザインとなっていくのかもしれません。「温故知新」とはこういうことかと改めて思いました

革の楽しみ

October 02 2009

こんにちは、工房の田沼です。今回は、ビスポークで使っている革について書きたいと思います。

REGAL TOKYOの工房では、フランス、イタリア、ドイツなどヨーロッパ産を中心とした良質なスムースレザー、さらにクロコダイル、クロコダイルヌバック、シャーク、リザード、珍しいところでは、毛付きのベビーカーフなども取り扱っています。特に、コードバンの色数の多さは自慢できるものと思います。全てで約150種類ほどの革をご用意しておりますが、そんな中には、今ではもう廃業したタンナー(革メーカー)の希少なストックもございます。

ところで、革にはそれぞれ個性があります。色は同じ黒色だとしても、「黒味」の違いがあります。青味が強い、赤味が強いなどです。革の厚み、表面(銀面)のツヤ、しなやかさ、クリームを入れた後の表情など色々な違いがあります。

例えば、コスティル(このフランスのタンナーも今ではもうありません)のスターブライトとスターボクサールでは、同じ黒ですが、表面のツヤの感じが違います。簡単に言うと、艶やかな輝きのスターブライトとしっとりとしたスターボクサールといった違いは言えますが、肌触りや変化の仕方など、これは言葉でお伝えするのは限界がございまして...。是非お気軽に革を見に来ていただけると嬉しい限りです。

ビスポークでは、それらの中から、お客様のお好みやデザインなどを合わせてご一緒に考えさせていただき、アッパーに使う革を決めていきます。これはお客様と私達で、これから作る靴のイメージを共有していく大切な作業の第一歩です。REGAL TOKYOで豊富なストックの中から革を選ぶという「楽しい悩み」をご体験いただければ、と思います。

 

こんにちは、工房の田沼です。

今回は、新しいサンプルが出来上がりましたので、紹介させていただきます。

デザインは、フルブローグのバックルブーツで、素材は透明感が素晴らしい国産の水染めコードヴァンのバーガンディカラーです。製法はノルウィージャンウェルトというもので、ウェルトをL字に縫い付け、ミッドソール、アウトソールを縫っていくというものです。

ところで、靴の製法には色々なものがありますが、欧米では開発者・発明者に敬意を表して個人名が製法につけられることが多いようです。そのことを考えると、この「ノルウェー」という国名を冠した製法というのになんとなく面白みを感じてしまいます。それは、私が極東の島国の東京都の住民で、遥かスカンジナビア半島の国のことを想像するからでしょうか?

ノルウェーといえば、小学校の時に習った探検家のアムンゼンや、「叫び」で有名な画家のムンク位しか関わりのない日本人の私が、ノルウィージャンやノルウィージャンウェルト製法を駆使して、銀座で靴を作っているというのも、何か靴の世界ならではの縁のようなものを感じてしまいます。(他にモカシン製法の靴をノルウィージャンモカシンということもあります)

 靴に話を戻してディテールを見ていくと、拘りはいくつもあるのですが、コバ周りに独特の雰囲気が出て、重厚かつアンティークな空気感が漂う1足に仕上がったのではないかと思います。

これから秋冬シーズンに向けて、ブーツの購入を検討されている方もいらっしゃると思いますが、こんな1足はいかがでしょうか。

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イメージの共有

June 26 2009

こんにちは、工房の田沼です。

今回は、先日納品させていただいたお客様の靴をご紹介させていただきます。

この靴はそのお客様が2足目として注文されたもので、素材はカールフロイデンベルグのボックスカーフを使っています。


靴を作るに当たり、お客様のイメージを元に、お客様と話し合いを繰り返し行い、仮縫いの際には、仮の靴を見ながら、更にお客様のイメージを汲み取らせていただきました。


流れていくようなメダリオン、切り返し部の形状、そして仕上げではメダリオンやブローギングに青いクリームを少し入れる事等により、ビスポークらしい、そのお客様の為だけの1足に仕上がりました。


お客様のイメージを伝えようとする熱意が結実し、靴という限られた立体の中にバランスよくおさまった1足になりました。私たち作製スタッフにとっても、上手にお客様とのイメージを共有できた「自信作」といえる逸品です。

こんにちは、工房の佐々木です。


 工房での私の主な担当は、パターン(紙型)設計と裁断・製甲です。木型を削ることや、「つり込み」「底付け」はしていません。「底付け」は靴学校時代に授業の中でやった事がある程度です。


パターンをおこすと、まず確認のために、革で簡単にアッパーを作り、形にしてみます。それを木型につり込んで、木型に合っているか、ラインは思う通りか、バランスはどうかなどをチェックします。


目に見えるライン修正や木型についている、ついていないなど触ってわかる修正は比較的やりやすいのですが、つり込みしやすい、しにくいという感覚だけは、実際につり込んだ人でないとわからないので、修正がとても大変です。


仮縫い靴、納品靴ができた後には必ず、つり込んだ人に、踵はどうだったか、甲はどうだったかなどの確認をしています。そして、良くなかった時は、話し合って原因を推測して、次に他の方法を考えて改善していきます。

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 でも、もし自分でつり込みまでやっていたら、その感覚を底付けの担当者と共有できるのではないかと思います。原因も改善策ももっとわかってくるのでしょう。全工程を一人でやっていなくても、できる職人さんは何人もいます。とても理想的です。ですから、全部はできなくても、自分の担当している次の工程はできるようになりたいと思っています。


そこで、久し振りに自分の靴をつくってみる事にしました。次のREGAL TOKYO REPORTの原稿を書くときまでに形になっているでしょうか。靴の学校の時にうまく出来ず、何回か泣いたこともあったので、ちょっと心配です。

こんにちは、工房の田尻です。いつの間にか桜も盛りを過ぎてしまいましたが、お花見は行かれましたか?私は、工房スタッフと一緒に日比谷公園でお花見ランチをしてきました。普段は、地下で製作に勤しんでいるので、たまには青空の下に出て伸び伸びとするのも良いものでした。


  さて、今日は注文靴のサンプルについて少し述べさせてください。


 注文靴(ビスポーク)は目の前にある靴を買うわけではなく、お客様が頭の中で描いている靴をカタチにして差し上げるという作業なのですが、これは本当に難しいことです。


  お客様がなぜビスポークを作ろうと思われたのか、どんなシーンでお履きになるのか、その靴を手に入れることによって何を得たいのか...等、お客様との会話やお会いすることによってインスピレーションを得るわけです。それを元に、作り手が靴に反映させて行くのですが、その時にお客様と作り手の間でイメージを共有する架け橋として「ビスポークサンプル」が大きな役割を果たします。全くモノがないと不安になりますが、だいたいこんな感じと把握できればおたがいに安心できます。私たちはこういうことを考えて提案しています、という思いがカタチになっているのが「ビスポークサンプル」です。作り手側からのラブレターとも言えますね。


 それでは、最近製作したサンプルを1点ご紹介してみましょう。


この靴は藍染めによる牛革のワンピースで、革の自然な風合いを残した仕上げとなっております。藍染めとは「ジャパンブルー」として世界的に知られた青と紫が美しく調和した色ですが、今回使用した藍は阿波(徳島県)のもので、上質の「すくも」を使った藍染用の溶液で何回も染色を繰り返すことによって深みのある色が良く表現されています。使うほどに色の変化が楽しめる面白い素材です。底付けはノルベジェーゼ製法を用い、インパクトを持たせながら手の温かみを残しました。また、シューレースの先端に甲革と共革を巻きつけて、シンプルなデザインながら装飾性を高めてみました。


このサンプルからどんなお客様とイメージを共有できるようになるのか、とても楽しみにしております。


カタチにする

March 06 2009

ビスポークサンプルを作る時、スタッフの間でイメージが分かれ、なかなか仕様が決まらない時があります。


今回はサドルシューズを水染めコードバンで作ることになり、9色から2色を選ぶ時も36通りの組み合わせがあるので、どの組み合わせにするのか、もちろん意見が分かれました。


その後、話し合いで藍染と柿渋に決まりましたが、同じ革の組み合わせでも どのパーツにどの色を使うかでどれくらい印象の違うものが出来るのか試してみよう という事になり、左右の色を逆にして作ってみることにしました。



 どうでしょうか?



お客様でもイメージだけでは決めかねて、仮縫い時に革の組み合わせや色、トウキャップの形、メダリオンなどを左右で変えて試される方がいらっしゃいます。


デザインによって履き心地が違ったり、木型に合わせて一つ一つ型紙をおこすので、左右で全く別の仮縫い靴を作ることは出来ませんが 、悩まれているお客様のイメージを出来るだけ仮縫い靴に盛り込めたらと思います。


矛盾してしまいますが、左右どちらも選べず、悩みを増やすような素敵な仮縫いの靴ができたら最高かもしれない と思うこともあります。

こんにちは、田尻です。


REGAL TOKYOでお客様が靴をオーダーされる際、我々スタッフと仕様や拘りの部分について一つ一つ確認しながら決めていきます。なかには、1足目は無難に黒をチョイスしても、やはりフルオーダーですから2足目以降となると少し色や素材で遊んでみたくなるお客様もいらっしゃいます。そんな時、お客様から「この革で靴を作ったら、どんな色のベルトを合わせたら良いのかなぁ?」と相談されることがあります。


靴とベルトの色というのは、同色で合わせるのが基本と申しますが、私見ではそれほど厳密に合わせる必要はないと感じております。しかし、靴の革の素材、色が既製のものでは全くないような場合にはお困りになる方も多いのではないでしょうか。


REGAL TOKYOではそんな方のご要望にお応えして、ビスポークをオーダーされた方のみ、ベルトのオーダーも承っております。例えば、こちらのベルトは、靴のカーフとリザードの異素材によるコンビ仕様をベルトにも応用したものです。出来も非常に良く、とても素敵な仕上がりになっています。コードバンやリザードのように革の大きさが小さいものや、衣服への色移り等の問題がありますので、どんなものでも受け付けられるという訳ではないのですが、靴の雰囲気に合うベルトがなかったり、靴と同素材でベルトが欲しいと思われたらお気軽におっしゃって頂ければと思います。 

先日、あるお客様のビスポークシューズの納品が行われました。その靴はこのお客様にとって5足目のオーダーになります。これまでの4足で使用してきた革も、ボックスカーフ、コードバン、リザード、それにクロコダイル とほとんどの種類を網羅してしまいました。そして今回は、仏製アニリンカーフで、色はバーガンディ。レースステイ部分はギリータイプになっているのですが、紐を掛ける部分に小さいシルバーのコンチョが付くのです。ビスポークならではのオリジナリティ溢れるデザインです。


お客様はシルバーなどがお好きで、同じコンチョをベルトにもつけていらっしゃいます。今回は、その思い入れのあるコンチョを靴にも付けて欲しい、ということからこのビスポークは始まり、このデザインにたどり着きました。つくり手側から見ると、明らかに作るのが難しい靴ですが、お客様とお話していると、何とかして思いを叶えてあげられないか、という気持ちが湧いてきて、試行錯誤しながら靴づくりを進めていきました。


仮縫い段階ではほとんどワンピースで作ることになっていたのですが、コンチョの迫力が出すぎている感じがしたので、つま先部分をショートウィングチップに、踵も切り離してそれぞれに親子穴を入れることになりました。アッパーにどうやってコンチョを付けるか、ということも大きな課題でした。初めはギリータイプなのでベロがない仕様だったのですが、裏側にどうしても凹凸が出てしまうのです。スタッフといろいろ話し合って、甲の部分は当ると痛みを感じやすい部分でもあるので、ベロを付けることになりました。


そして、遂に完成した靴をお客様に納品することになりました。お客様はその靴をご覧になって、とても喜んでいらっしゃいました。私には、このデザインにたどり着くまでに話し合った色々な事、いざデザインが決まってからカタチにするまでの試行錯誤、などの紆余曲折が思い出されました。お客様の想いがこもった一足を、何とかカタチにできたことで、お渡しした時に、お客様とつくり手が一緒に達成感を味わう事ができた瞬間でした。その一足には、お客様とつくり手の色々な想いが「Share」されて、こもっているように私は感じたのでした。

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